【初めて爬虫類の迎えをお考えの方へ】
私はブラジル出身で10才で来日しましたが、
それまではブラジルの広大な敷地の家で大型犬と戯れる日々を過ごしておりました。
しかし日本では、マンションなどの集合住宅に住むと大型犬はおろかペット禁止の住宅が多いです。
それに対し爬虫類は、狭いスペースで飼育可能な種類が多く、鳴き声に困ることも少なく(ほぼ鳴かない、鳴いても音量的に小さい)、生体自体も無臭です。
その為、現在の日本に住む方ならば合理的なペットであると私は思います。
『爬虫類』と聞いて、まずは何が頭に浮かびますか?
良いイメージでしょうか?
楽しいイメージでしょうか?
お迎えをするきっかけには、「可愛いと思ったから」という方もいますし、
「珍しさ」や「奇抜な姿が”面白い”から」という理由がきっかけの方もいらっしゃいます。
初めのきっかけは人それぞれですが、お迎え後に飼育する楽しさはきっと共通することでしょう。
私自身、飼育していて毎日とても楽しいです♪
しかし、もしかすると初めて飼う方の想像する”楽しい”と私の”楽しい”は、少々異なるかもしれません。
そのあたりに触れつつ、爬虫類を飼う際に注意すべき点や、お迎えに至るまでの流れを解説して行きたいと思います。
(少々長文になりますが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。)
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最近では、
”人について歩くカメちゃん”
”首に巻いたヘビちゃん”
”呼んだら来るトカゲちゃん”
などを、テレビやYouTubeで見かけることがあります。
そのような姿を見て、爬虫類に興味をもった方もいるかもしれません。
しかし、そこで見た「一緒に遊んで触れ合えて」というイメージでお迎えしてしまうと、
「思っていたのと違う!」ということになってしまったり、迎えた方も迎えられた方もストレスになる可能性もあります。
全ての種類に当てはまるわけではありませんが、「うまくいかない」と受ける飼育相談のほとんどの原因が、
飼育環境、病気、もしくは構い過ぎによる生体のストレスです。
《爬虫類の性質》
爬虫類のほとんどは触れられる事を望んでおらず、見られているだけで強いストレスを感じる種類も沢山います。
どうしても私達人間は「可愛いと思うもの」「好きなもの」を構いたくなります。
「可愛くて飼っている子達と触れ合えないなんて!」と思う気持ちも十分理解出来ますが、
残念ながら、彼らは犬猫みたいに「待ってたよ!」と帰りを待ち構えてくれるような生き物ではなく、
懐くこともありません。
ですが、頭のいい子たちなので私達を”餌をくれる人・飼い主”だと認識し、
手をかければかけた分だけ、慣れてくれます。(慣れない子もいます^^;)
餌を食べる行為自体もそれは当たり前のことではなく、飼い慣れた人でも【拒食】という壁に直面する事があります。
この【拒食】には様々な原因がありますが、
【拒食】=餌を食べないから病気・不調 とは限りませんし、逆に餌を食べているから元気とも限りません。
餌の頻度も、小型のリクガメに毎日餌を与える必要があるのに対し、大型の蛇となると2週間に一回の餌やりで十分であったりします。
このように週1回のメンテナンスで大丈夫な子もいれば、毎日朝晩目が離せない子もいるのです。
一緒に暮らしたい子がいるのであれば、必ずお迎えする前に、
飼い主のライフスタイルがその子の面倒をしっかりみれるのか、今一度考えてみましょう。
《爬虫類のルーツ》
一般的に売られている爬虫類のルーツは主に3つです。
1.CB (Captive Bred)
人間の飼育下で繁殖された個体
2.WC (Wild Caught)
自然で採集された個体
3.FH (Farm Hatched)
生産国のファーム(飼育場)で繁殖された個体
1.〈CB〉人間の飼育下で繁殖された個体
人間の飼育下で繁殖された個体のため飼育しやすい傾向にあり、入手しやすい餌に餌付いてたり、傷跡がなかったりと良いところが沢山あります。
しかし、品種改良のための近親交配のなかで生まれた個体ともなれば、自然界の生体より貧弱であったりします。
2.〈WC〉自然界で採集された個体
こちらは一般に「ワイルド個体」と称されます。
飼育者のなかにはワイルド個体しか好まない愛好家がいるほど、生体には自然界で生き抜いて来た逞しさがあり、言葉では伝わり難い魅力があります。
ただ飼育するとなれば、なかなか餌を食べなかったり、当然ながら人間に慣れていないので荒い個体が多いです。
またワイルド個体は寄生虫を持っている可能性が非常に高いです。
そのため、飼育難易度はCBより上がります。
3.〈FH〉生産国のファーム(飼育場)で繁殖された個体
ファームハッチとは現地のファームで繁殖された個体の事をいいます。
生まれて間もない時に輸入される事が多く、その種類の繁殖シーズンとなれば数も多く出回ります。
人間の手が加わっている事もあり、どちらかと言うとCBよりになります。
気に入った種類、子を迎えることは前提ですが、
その中でも選択が可能なのであれば、〈CB〉もしくは〈FH〉の方が最初は安心だと思われます。
《爬虫類の値段》
近年では、爬虫類専門店や即売イベントなど、爬虫類が以前よりペットとして身近な存在になりつつあります。
国内ブリーダーの増加、海外輸入などの流通量増加により、
数千円でお迎え出来る個体もいれば、新たに生み出された品種やレア種など300万円以上の天井無しの値段の子もいます。
安いから別に死んでしまっても構わないなんて思う人はいないと思いますが、
初めてお迎えする生体こそ、
値段を気にせずに「一緒に暮らしたい」と思える子をお迎えしてほしいと思います。
《どこでお迎えすれば良いか》
2014年9月1日以降、動物愛護法の改正により対面説明と現物確認が義務化され、
爬虫類・小型哺乳類の通信販売が現在では禁止されています。
現在、爬虫類・小型哺乳類をお迎えできる場所は、主に
1.総合ペットショップ
2.爬虫類専門店
3.即売イベント
です。
これらに関しましては、それぞれのメリットとデメリットを説明していきます。
1.〈総合ペットショップ〉
多くは身近な立地にあり、時間営業をしています。
最近では大型量販店の中に入っていることも多い為、
普段の買い物ついでに餌を購入できて、非常に利便性が高いです。
一方で犬猫の販売が中心で爬虫類がメインではない事もあり、値段が相場よりも高い傾向にあります。
また、爬虫類に特化したスタッフが在中していない事もあるため、購入後のサポートが不十分なことも多々みられます。
2.〈爬虫類専門店〉
専門店ということもあり、お迎えの準備段階からアフターケアまで、爬虫類に特化した専門的な知識や経験でサポートが可能です。
また、生体や餌の値段も比較的安価で提供しているお店が多くみられます。
一般的なペットショップと比べると少しマイナーな動物達を主に取扱っているため、小さな店舗で営んでる事が比較的多いです。
また、イベント出店などで臨時休業や急な営業時間変更など、利便性に欠けるところもあります。
多くの爬虫類飼育者は、お店に行ったら閉まっていた。という経験を一度はしているのではないでしょうか。
3.〈即売イベント〉
近頃では、毎週末という頻度で全国のどこかで即売イベントが行われています。
多くの爬虫類専門店が一つの場所に集うため、圧倒的な数の生体・物品から見比べる事が出来ることと、
店舗価格より安い場合もあることが、イベントの大きな特徴でありメリットです。
とてつもない生体の数が揃い、見た事のない種類が見れたりと、”お祭り”のような雰囲気を行くだけで楽しめます。
一方で、ショップが全国各地から集うため、移動のストレスがかかってしまい調子を崩してしまっている事があります。
お迎え後のケアに関しても遠方から出店のショップで購入した場合は、直接診てもらう事が難しくなります。
電話などで相談に対応してくれるショップもありますので、イベントでお迎えした場合はどこのショップで迎えたかを確認出来るように、
購入時に渡される「生体販売確認書」やお店の名刺を残しましょう。
以上、それぞれのメリットデメリットについて書きました。
上記の事情を含め、初めてのお迎えとなると、ご自身が通える〈爬虫類専門店〉をおすすめします。
疑問や不安があれば、専門的な知識や経験でアフターケアしてくれるお店が安心といえるでしょう。
《初期費用》
生体自身と種類により、揃える必要がある物が変わってくるのが爬虫類です。
(例1)
★比較的寒さに強い
日本の蛇『アオダイショウ』
・ケージ(10000円)
・水入れ(500円)
・隠れ家・シェルター(3000円)
・パネルヒーター(5000円)
・床材(2000円)
→初期費用 約2万円前後+生体代
(例2)
★紫外線ライトと体を温めるライトを必要とする
オーストラリアの砂漠地帯などに生息の『フトアゴヒゲトカゲ』
・ケージ(20000円)
・水入れ(500円)
・餌入れ(500円)
・隠れ家・シェルター(3000円)
・パネルヒーター(7000円)
・上部ヒーター(8000円)
・床材(2000円)
・UVA・UVB兼用ライト(8000円)
・ライトソケット(2000円)
・温度を自動で管理するサーモスタット(10000円)
→初期費用 約6万円前後+生体代
上記2例を比較してわかるように、生体によりケージの大きさやライトの有無で大きな差が出てきます。
なかには生体代よりも、設備費用の方が高くつくことも。
種類によってはベビー時と成熟したサイズに大きな差があり、お迎え当初のケージでは終身飼いきれない事もありますので、
その場合は買い替える必要があります。
よって、初期費用は種類によって異なり約2万円〜6万円になります。
《ランニングコスト》
ランニングコスト(維持費)は、主に餌代、電気代、雑費の3つですが、
初期費用同様その種類が食べる餌の種類や量、使う電力によって値段が大きく変わります。
〔爬虫類の餌について〕
主に与えるものは、
〇一般的にどこにでも売られているもの
・小松菜人参などの野菜
・鶏肉、レバー
など
〇専門店で取り扱われているもの
・活・冷凍ラットやマウス
・コオロギ、デュビア(ゴキブリの一種)
・ワーム、小赤
など
近頃では虫が苦手な方でも与えやすい、冷凍品・ペースト状のもの・ペレットなどの人工フードも流通しています。
〔電気代について〕
電気代はエアコンの有無、使用するライトやヒーターなどのワット数によって異なります。
季節で電気代の変動が大きく、
真夏はクーラー、真冬は暖房・ヒーターでの使用電力が必然的に上がるため、電気代はその時々で倍以上変わる事もあります。
〔雑費について〕
雑費とは床材などの事を指します。
飼育するなかで、彼らが快適に過ごせるための欠かせないものです。
・ハスクチップ(ヤシガラ)
・デザートソイル
・カルシウムサンド
・水苔
・ペットシーツ
など
爬虫類を飼育するなかで温度や湿度は非常に重要であり、それらを維持させるための大切な要素が床材です。
なかにはコスト面から、新聞紙などを使う場合もありますが、床材に関してはコストよりも生体に合った物を使いましょう。
★ランニングコストの一例★
(例)
レオパで知られる『ヒョウモントカゲモドキ』
・人口フード餌代月約1000円
・ヒーター電気代約2000円
・雑費を役1000円
→ランニングコスト約4000円/月
それに比べ上記で紹介した『フトアゴヒゲトカゲ』だと、真冬は電気代だけで1万円は軽く超えてきます。
結果 初期費用同様で、ランニングコストに関しましても、
生体により季節にごとにかかる電気代の変動が大きくなります。
種類によって異なりますが、約2000円〜2万円/月くらいと考えておきましょう。
《病気について》
爬虫類も犬や猫と変わらず、病気になることがあります。
しかし、爬虫類を診察してくれる動物病院は少ないです。
何かあったときに何処に連れて行くかを、事前に調べておく事をおすすめします。
爬虫類に限る話ではありませんが、自然界は弱肉強食です。
自分を弱く見せてしまうと他の動物の餌食になってしまうため、
多くの爬虫類は調子を崩したり、病気になってしまったとしても、
それを隠そうとします。
そのため、症状がわかりやすく出る頃には病気が進行してしまい、手遅れになる場合もあります。
爬虫類は人間とは違い表情がわかりづらいので、調子が悪いことにいち早く気付く為には、より一層の観察が必要になります。
「いつもと違うな」と感じたときは、それが何かしらのサインかもしれません。
いずれにしても日頃からよく観察し、気になる事があれば、ご購入されたショップや動物病院に相談しましょう。
《備えについて》
爬虫類は変温動物です。
自分自身で体温を調節出来ません。
しかも、特に寒さに弱い種類が多く、季節や一日の中でも寒暖差が激しい日本では、
その種類に適切な、温度または湿度を保ってあげることが必要不可欠です。
その為、ライト類、ヒーターやエアコンなどが電力製品が欠かせません。
万が一災害などで停電が起きると、変温動物の場合は命に関わってきます。
事前に災害時の対策を調べて備えておきましょう。
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☆最後に☆
長くなりましたが、初めて爬虫類のお迎えをご検討されていることは、
同じ爬虫類好きとして大変嬉しいことです^_^
爬虫類の特性やお迎えしたい子の特性、飼育環境についてなどなど、
ショップやインターネットで正しい情報を得て、
適切な飼育設備を整えてあげた状態で、お迎えしてあげましょう^ – ^
最後まで読んで頂きありがとうございました!
それでは、楽しい爬虫類ライフを!